【第943回】 合気道としての杖の稽古

これまでも合気道でも、剣(木刀)や杖の稽古もしなければならないと書いてきた。その証拠に本部道場には刀掛け台に木刀と杖が掛かっており、誰でもつかえるようになっている。これは大先生が居られたころからで、今でも変わらない。しかし本部道場では剣や杖の振り方は教えない。合気道は決して攻撃することがないからである。攻撃法の剣や杖は教えないのである。その代り剣や杖の攻撃に対する技は教えている。敵が敵の武器で攻撃してくる攻撃とこちらの武器を敵が抑えたり、掴んだ場合の反撃に対するものである。太刀取り、杖取りがそれであり、試験の科目にもなっている。
故に、道場の剣や杖は昇段試験を受かるためになってしまったようにも見える。

初心者は試験のために太刀取り、杖取りを稽古するが、形をなぞっているだけで武道的な説得力が欠ける。その最大の原因は、剣(木刀)や杖を振り込まないからだと思う。敵の剣や杖を捌き、合気の技をつかうためには、敵よりも数段上につかえなければならない。剣や杖が十分振れないのに敵のそれを捌くこと等できるはずがないからである。論理的に考えれば誰でもわかるはずである。

黒帯の有段者になると剣や杖を振れるようにしなければならないと思い、道場の刀掛け台の剣や杖を取って振る人もいるが、取って振り始めても余り続かずにすぐにやめてしまう。中には自信ありげに杖を振る人もいるが、やっているのは神道夢想流の杖の形である。
つまり、剣や杖はつかってもらうことを刀掛け台で待っているのだが、どのようにつかう、つまりどのように振っていいのかわからないのだと見る。自分自身も以前はそうだったのでわかる。
それでは剣や杖をどのようにつかえばいいのかという事になる。合気道として剣と杖をどのように振ればいいかということである。

合気道の動きは剣や杖の動きに由来するものが多いといわれる。この意味でも剣杖のつかい方の研究は必須である。剣を振り込み、杖も振り込まなければならない。先輩の中には毎晩1000回振った方もおられたが、並みの剣道家でも出来ないような早さと強さで剣を振っていた。
先ずは振り込むことであり、これが基本であろう。1000回が無理なら100回でも10回でも決めて振ればいい。
しかしこれだけでは剣道や杖道になってしまう。合気道のための稽古法があるはずであるし、それを探究することである。
こう振ればいいのではないかと、これまでわかったことを箇条書きしてみる。但し、今回は杖の稽古法とする。また、この内、杖の突きに重点を置くことにする。

を錬磨するのである。

この動きを身に着けるように杖を振っていけばいい。そして、それがある程度身に着いたら、杖を持たないで杖をつかうのである。これが単独の徒手運動であり、合気の動き、形になるはずである。
この動きと形ができてはじめて杖取りができ、そして太刀取りが出来るようになるはずである。
合気道としての杖の稽古をしなければならない。道場の杖や木剣が奪い合いになるぐらいつかわれるようになることを期待している。杖や木剣も待ち望んでいるはずである。